奥秩父
本谷川金山沢本谷
２０１４年９月１５日
西嶋敏也（単独）
浮かんだばかりの音のカケラ口ずさみながら旅に出よう
叶える夢は心の中 やさしく微笑む
遠くまで歩く僕を見送る空 あたたかな色
金山沢に沿う林道は入口付近の橋が流失し、車では入れない。林道入り口空地にＢＢＲ号を待たせる。
林道を歩いて行くが地図に載っていない堰堤が幾つも出てくる。林道もそのうち、林道だか踏み跡だか分からなくなるが、最後前の堰堤までは何とか歩いて越えて行ける。最後の堰堤が少し厄介で右岸を灌木頼りに越えて行く。これを越えるとすぐにＦ１の滝が見えた。
Ｆ１、８ｍは右側を登れるようだが、ボクにはルートが見いだせない。左から簡単に巻く。
少し行くとＣＳ５ｍだ。「岩の左の方が右より比較的簡単だ」という情報をもとに岩の左側に挑戦するが皿から水があふれ流れているような状態でスタンスが無く登れない。おまけにやけに水が冷たい。一瞬で諦める。
右側に取り付いてみる。壁とのコンタクトラインを行く。途中まで登れるが最後の１ｍ程上がるのにスタンスが無い。ハーケンも１枚打ってあるが１人では使いようが無い。
そうこうしているうちにクラックをつかんでいる腕が疲れてくる。腕を壊してしまってから茶碗を持っていてもすぐに疲れて持っていられなくなる。もうボクの腕は使い物にならない。
何度か挑戦したが結局登れなかった。４級はもう登れないという事だ。
悲しみの雨がこの心を時には激しく突き刺すけど
僕はあなたの好きな歌を唄い続けよう
途切れぬ想いを胸に碧い空の遥か彼方へ
「さて、どうしたものか」と周りを見回すと左岸の上の方に残置が見えた。おまけにカラビナまで付いている。誰かが懸垂下降で残して行ったのだろうか？登れない輩は他にもいたのだ。
残置を目指して巻き始めるが、その残置の少し手前にリングボルトが打ち込まれていた。強度を何度か確かめると使えそうなのでこちらを使って懸垂下降する。滝上ギリギリの所に降りられた。これを越えてしまえば後は問題ない。
その後の滝は小さな巻も含めて快適に越えて行ける。
大日沢を過ぎてしばらく行くと水流は無くなる。その後現れるはずの「ピラミッド岩は左岸の泥混じりの岩を越えるのだが、いやらしい。」も石塔沢を過ぎた辺りに出てくる「Ｆ１０（１５ｍ）ＣＳ滝」も無くなってしまったようだ。
ガレガレの斜面を登り、傾斜がきつくなってきた所で左の小尾根に逃げ込む。緩やかにトラバースしながらコンパスを頼りに稜線を目指すと狙った所の登山道に出た。
どれだけ遠い場所にいても 孤独の闇に包まれても
あなたがいつも僕を照らしてくれるから迷わないよ
登山道に出るとブームなのか百名山詣でなのかハイカーが多い。大日岩を経由して富士見平に下って行く。富士見平も人でいっぱいだ。にぎやかな大勢のパーティーの後ろをトボトボと一人寂しく下って行く。一緒に歩いていた頃が懐かしい。里宮平も大勢の人でにぎわっていた。
未だ見ぬ道に吹く春風 舞い散る花が手招きをする
照れくさいけど聞いてよ ずっと言えなかったあの言葉を
どうしても伝えたいんだ
「一緒に歩いてくれて ありがとう」
記：西嶋敏也
ゴシック体部分：三浦祐太郎「ＴＨＥ ＷＡＬＫ」
◆タイム 林道入口8：10－標高1620ｍ付近最終堰堤9：01－石塔沢出合10：39－登山道11：46
◆地形図 瑞牆山