南会津
稲子山（中退）
2014年２月25日～26日
小松丈輔・ＫＮ
■２月25日（火） 曇りのち風雪
会津高原尾瀬口駅からバスに乗るまではポカポカの快晴だった。小立岩から安越又川沿いの林道へ。除雪などされておらず、出だしからラッセルとなる。最悪の湿雪で歩きにくい。ワカンに雪がくっ付いてくる。山毛欅沢出合いまで約１km、１時間かかってしまう。あれ？雪が降ってきた…と思っていたら、橋が見えてきた頃には本降りになってしまった。数年前の豪雨の被害で崩壊していた橋はキッチリ新しく掛け替えられていて、渡渉せずに済んだ。山毛欅沢の右岸尾根に取り付く。かつては道が拓かれていたと聞いたが、その名残か、所々ブナの幹に赤マークが付いている。嫌になるような急斜面はないが、ホッとする平坦地もない…ジワジワと効いてくるボディブローのような登り。ワカンに付く雪はこまめに叩いて落とさないとみるみる高下駄になってしまう。雪は強まったり弱まったり、風とガスも出てきて視界が乏しい。それでも1時間100mのペースで高度を重ね、予定の16時、1230ｍ付近で行動終了。上空の風が強く、ブォーという音が恐ろしい。ブナの梢が一面大きく揺れる。テントを張った場所は運良く二重稜線の間で、うまい具合に風を凌げている。それでも時折巻いてくる風がバタバタバタとフライシートを煽ってきた。
ボクとＮＫさんは幕場に着いて少しぼんやりするのが好きなのだが、風の音を聴いているのも気が落ち着かないので、ビールを飲みながらつまみや食事の用意をして気を紛らわせた。酔ってしまえばこっちのものである。ＮＫさんも今日は350ｍｌの缶を背負ってきていた。ラジオを聴いていると、明日は確実に晴れるようである。もう雪は降っていない。今日は予想外あいにくの荒天で標高も距離も稼げなかった。すでに稲子山まで行くのは諦めていたが、この風さえやり過ごせば、明日は快晴のブナ尾根を歩ける。主稜線まで出て展望を楽しんで下山。林道を頑張って13時のバスに乗り、夢の湯に入って帰ろうと予定を相談修正した。
晩メニューのキムチ鍋がことのほか上手にできて、お酒も進む。ＮＫさんからも「おいしい、おいしい」とお褒めの言葉を賜った。宴会お開きの前、トイレに外に出ると満天の星。上空の風はまだ相当に強く音を立ててブナの梢を揺さぶっているが、明日の快晴は約束されていた。1436ｍのピークまで登って主稜線に立ち、稲子山の姿は見て帰ろうと心に決めて消灯就寝。
■２月26日（水） 快晴
４時起床。朝食は昨夜のキムチ鍋の残りとカレーライス。食後のティータイムもしっかり取って出発は７時。テントの外は文句無しの快晴。昨夜の風雪でリセットされた新しい雪斜面に踏み出す。昨日とは一転、乾いた雪質が気持ちいい。登るにつれて樹々の並びが整い、太いブナ立ち並ぶ素晴らしい雪尾根となる。雲ひとつ無い青空、小沢山は沢を隔ててすぐそこに見えている。遠くには窓明山、その隣に三岩岳、さらに奥には大戸沢岳…真っ白な連なりが美しい。反対側には山毛欅沢山がドンと座っている。標高が上がって雪が乾いてきたせいかワカンに雪は付かなくなったが、サラサラとした乾雪は踏み固まらずにラッセルのスピードが上がらない。それでも主稜線までの約200ｍを１時間強でこなし、８時過ぎに1436ｍのピークに立つことができた。
素晴らしい天気、素晴らしい展望。満足感で上手く言葉が出てこない。風も無く、静かなピークだった。30分も静かに稜線を眺めていた。全く飽きなかった。
幕場まで、登ってきたトレースを辿りながら、会津ブナを愛でつつ下山。昨日は風雪とガスで周りの景色を楽しむ余裕が無かったが、今日は全てがクリアに目の前に広がっている。山毛欅沢出合いに降り、橋の上から見る安越又川の雪景色が優しくクリーミーに見える。陽が高くなり、雪が重くなり始めた。ワカンに付く雪をストックで落としながら１時間の林道歩きを頑張ると、人の匂いがする集落ももう間近である。
ちょうど12時、小立岩の集落に着く。足回りを外し、簡単な着替えと荷物整理が済んだ頃、いいタイミングでバスがやってきた。暖かい車内、心地よい揺れに身を任しひと眠り。例によって「夢の湯」で汗を流してサッパリした後、ガラガラの車内で美味しいビールを飲みながら、のんびり帰京した。（記.小松）
◇コースタイム（記.ＫＮ）
２月25日 会津高原尾瀬口駅発9：35－小立岩バス停発11:15－山毛欅沢右岸尾根取り付き12:30－1235ｍ幕場16:20
２月26日1235ｍ幕場発7:00－Ｐ1436ｍ8:10－下山開始8：45－1235ｍ幕場9:15－撤収後出発10:00－山毛欅沢出合の橋11:05－小立岩バス停着11:57－バス出発12:3－会津高原尾瀬口駅着14:00
◇地形図 内川